アメリカの貿易赤字はホントに悪いこと?〜ドルのチカラと世界の仕組み〜

経済と社会

こんにちは、JINKです。

今回は「アメリカの貿易赤字って、本当に悪いことなの?」というテーマで、2025年4月時点の現実を踏まえて、やさしく解説してみたいと思います。

最近ニュースやSNSでよく見る「アメリカは貿易赤字で損している!」「関税をかけて取り戻せ!」という声。でも、それって本当なのでしょうか?


貿易赤字って、そもそも何?

まず基本の「貿易赤字」から。

たとえば、あなたが毎日コンビニでジュースを買うとします。お金を払って商品をもらう。 この時「お金を出す=損してる」とは思いませんよね。ジュースが欲しいからお金を払っているわけで、双方納得している取引です。

国の貿易もこれと同じ。 アメリカは、海外から自動車やスマホなどを大量に輸入しています。一方で、輸出するモノがそれに見合わなければ「貿易赤字」と言われます。

でも、「お金が出ていく=損」ではないんです。 それには、アメリカならではの特別な理由があるからです。


ドルは世界の“ヒーロー通貨”

アメリカの通貨「ドル」は、世界中の人が「使いたい」と思うお金です。なぜなら:

  • 世界のほとんどの貿易がドルで行われている
  • 石油や金属などの資源も、ほぼすべてドルで売買されている
  • 各国の中央銀行も外貨準備としてドルを大量に保有している

この特別な立場を「基軸通貨」と呼びます。 つまり、アメリカがドルを払って商品を輸入すると、そのドルは世界で感謝されながら流通していくのです。


実は“貸してる側”?貿易赤字の裏の仕組み

アメリカが世界にドルを支払う(=赤字)と、受け取った国々はそのドルで何をするか?

多くの場合、アメリカの「国債」を買うんです。

国債=政府の借金証書。

つまりこういう仕組みです:

アメリカ「モノ買うからドル出すよ〜」 世界「ありがとう!余ったドルでアメリカ国債買うね」 アメリカ「おお、またドル戻ってきた〜!」

…すごくないですか? まるで“無限クレジットカード”のように、アメリカはお金を世界に払いつつ、それが国債購入として戻ってくるんです。

しかも利息(=金利)も安い。なぜなら「ドルはみんなが欲しがる通貨」だから。


クレジットカード感覚で世界を動かす

このサイクルをもう少し噛み砕くと:

  • アメリカが商品を買う(ドルが出る)
  • ドルをもらった国がアメリカ国債を買う(ドルが戻る)
  • アメリカはまたそのドルで買い物できる

ドルが世界に回り、またアメリカに戻ってくる。 これが、アメリカの「強さの源」なんです。


他にもある“ドルの特権”

● アメリカ企業は「為替リスク」がほぼゼロ → ドルで世界と取引できるので、両替コストやリスクがない!

● 石油はドルでしか買えない(ペトロダラー) → アメリカはエネルギー取引でも優位な立場

これらすべてが、「貿易赤字でも困らない」どころか「貿易赤字によって得している」構造をつくっているんです。


それでもトランプ氏は怒る…なぜ?

2025年現在のアメリカ大統領、ドナルド・トランプ氏は、関税を強化し「赤字は損だ!」と繰り返し訴えています。

でも実は、トランプさんやその周辺(経済ブレイン)もこの構造はよく理解しているはずです。 それでも強硬な貿易政策に出るのは、「経済のため」だけではありません。政治的・戦略的な狙いがあるんです。


トランプが関税政策を進める“本当の理由”

① 支持層へのアピール(特にラストベルト)

かつて工場が栄えていた「ラストベルト(中西部の製造業地域)」では、安い外国製品に押されて職を失った人が多く、彼らは「アメリカが損をしている」という感覚を持っています。 トランプはその声に応えることで、支持を固めているのです。

② 対中戦略・交渉カード

関税は、中国との駆け引きの武器でもあります。 「痛みを与えて、譲歩を引き出す」ビジネスマン的な発想で、あえて厳しい態度をとっている面もあります。

③ メディア映えする“強いアメリカ”演出

トランプは何かと「わかりやすい敵」をつくることで、自分の存在感を高めるのが得意です。 関税強化は、「アメリカを取り戻す」というストーリー作りにもつながります。

④ 一部の産業に即効性がある

鉄鋼やアルミなど、関税で守られる産業は実際にあります。 短期的には雇用が回復し、「成果」を見せやすいという政治的メリットもあるのです。


貿易赤字を減らせばいい、とは限らない

仮に、関税で輸入を制限して赤字を減らしたら?

  • 世界が「もうドル使いたくない」となれば?
  • ドルの価値が下がり、物価が上がる
  • 国債を買ってくれなくなり、借金がしづらくなる

つまり、「ドルの信頼=アメリカの力」なのです。


結論:貿易赤字は“弱点”ではなく“武器”にもなる

アメリカの貿易赤字は、ただのマイナスではありません。 それは世界中にドルを流通させ、アメリカの地位と経済を支える仕組みでもあります。

トランプ氏の関税政策も、経済だけではなく、政治・外交・国内対策という複数の視点から見ていく必要があります。

表面的な「赤字=悪」ではなく、 「なぜ赤字なのか?誰が得しているのか?どんな意図があるのか?」を読み解くことが、これからの世界を知る大きなヒントになります。


📝この記事が少しでも経済ニュースを見る視点のヒントになればうれしいです!

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